「自転車でお遍路の旅をする」という雑誌の企画で、清志郎は、愛車オレンジ号とともに一路四国へ。
「ツール・ド・奥の細道」では松尾芭蕉の足跡を自転車で辿った清志郎ですが、今回は弘法大師の修行の道を走ります。
サイクリングコースとして「なんとなくお遍路道には興味があった」という清志郎。
1200年もの間歩き継がれてきたお遍路道は、清志郎にどんな表情を見せるのでしょうか?
10月30日
前日に飛行機で徳島入りし、本日はサイクリングのスタートを切るべく一番札所の霊山寺(りょうぜんじ)へ。あいにくの雨模様のため、雨が弱まったところでスタートしようと待機するも、一向に雨のやむ気配がありません。バスに乗った観光客が行き来するのを横目にしながら、清志郎は自転車の感触を確かめるようにお寺の周囲を走ってみたり、心拍計をチェックしたりと落ち着きません。
ただただ走りたそうにしています。しかしそんな清志郎の思惑をよそに、雨足は強くなる一方、本日のサイクリングは断念し、霊山寺の住職のお話を聞いて終了となりました。
10月31日
雲は多いものの、雨が降っていないことを確認した清志郎は「今日は走るぞ!」と気合十分です。本日は標高700mにある、第十二番・焼山寺(しょうざんじ)を目指します。ホテルの支配人にも相談しながらルートを検討します。支配人は走りやすい国道を使っての遠回りルートを提案してくれましたが、同行の藤下トレーナーが一気に高さを登って行く県道コースをプッシュしたため、そのコースが選択されました。
走り始めてみれば想像以上のハードなコース、斜度が15度を越えるような坂道もあり、清志郎は一歩一歩自転車のペダルを踏みしめて、登っていきます。その後を追う取材車のエンジンも、きつい傾斜に唸りをあげています。
霧の立ち込めるおへんろ駅を通過し、いよいよ勾配はきびしくなります。焼山寺まであと一息、霊跡・杖杉庵(じょうしんあん)で休憩し、再び走り出したところで、突然大粒の雨が落ちてきました。けっこうな土砂降りです。しかし清志郎は雨に濡れるまま、秋の気配の深まりつつある山道を、ひたすらにペダルをこぎ進めています。そして、体から湯気を立ち上らせながら、焼山寺に到着。
「すごく苦しかったけど達成感がある」と語った清志郎の表情に疲れの色はあるものの、笑顔でした。
11月1日
前日とはうって変わっての快晴!絶好のツーリング日和!しかしこの日もハードなコースが清志郎を待っていました。
第十九番・立江寺(たつえじ)を出、番外霊場・星の岩屋に向かいます。みかん畑の中を行く山道もまた、昨日に劣らぬ急な上り坂。見下ろせば緑の絶景が広がっているのですが、清志郎はそんなのどかな眺めをよそに、ペダルをこぎ続けます。タクシーで霊場を目指すお遍路さんたちが、車窓からそんな清志郎に驚きの視線を投げかけてきます。そして、岩屋の下にある不動の滝に到着。水しぶきを受けながらひと休みの後、第二十番・鶴林寺(かくりんじ)に向かいます。
この道のりもまた急勾配との戦いでした。きついところでは20度の斜度があります。「また坂道だよ…」とぼやきながらも、清志郎は自転車から降りることなく、こぎ続けます。
午後になって鶴林寺に到着。お寺の方には「ここまで自転車で登ってくる人はいませんよ」と感心されていました。その後第二十一番・太龍寺(たいりゅうじ)を回り、日が暮れてから到着した第二十三番・薬王寺(やくおうじ)が本日のゴール。
この日は宿泊地である千羽温泉でゆっくりとお湯につかり、疲れた体を休めました。
11月2日
すこぶる快晴。ようやく坂道から開放され、室戸岬を目指して海沿いの道をひたすら行きます。左手に光る海を見、穏やかな潮風を受けながらの快調なサイクリング。80kmの道のりを3時間半で走りきり、ゴールを迎えました。 地形、気候ともに様々なコンディションでのサイクリングは、まさに「修行」ともいえる、困難で充実したツール・ド・お遍路でありました。