Odometer:
ことは2000年の終わり、清志郎がこんなニュースを耳にしたことからはじまる。雪山で雪崩に巻き込まれた息子を、80歳の父親が吹雪のなか探しに行き、自ら救出したというニュース。
その、人間の秘めたる能力というものに、清志郎は大いに衝撃を受け、そしてわが身を振り返る。「自分にはそんなに歩く能力が備わっているだろうか?」と。
そこでまず、「鹿児島まで歩いて辿りつこう!」ということをひらめくも、しかしきっと疲れたら交通機関をアテにしてしまうに違いないと思い直す。そしてさらなるひらめき―「ならば自転車ならどうだ?」これが清志郎の自転車ライフのきっかけであった。
鹿児島へのツーリングは具体的な目標となり、自転車の先輩である、DANGERでもおなじみの早川岳晴さんに話を聞きに行く。
「鹿児島までいけると思う?」と尋ねる清志郎に、「LSDで行けば大丈夫」と、早川さん。いきなりの「LSD」という言葉に驚くも、この「LSD」は当然、あの「LSD」ではない。
Long Slow Distance―すなわち長い距離をゆっくり行くこと。鹿児島への道のり、ツール・ド・鹿児島の秘訣は「LSD」。清志郎を会長とする、チームLSDがここに誕生したのであった。